(8)喫煙と脂質異常症
 喫煙は血清脂質、リポ蛋白量に変化をもたらす。Craig WYらは横断研究54論文(日本人に関する2論文を含む)をメタ解析し、喫煙者は非喫煙者と比較して有意に血清コレステロール(3.0%)、中性脂肪(9.1%)、VLDLコレステロール(10.4%)、LDLコレステロール(1.7%)が高く、HDLコレステロール(−5.7%)、アポリポ蛋白AI(−4.2%)が低いことが明らかになり、この影響に用量反応関係が認められた(文献23)。さらに、禁煙した者は非喫煙者と同じか、喫煙者と非喫煙者の中間に位置すること、コホート研究でHDLコレステロール、アポリポ蛋白AIが、禁煙すると非喫煙者レベルまで変化することが示され、喫煙が直接作用として脂質代謝に影響を及ぼしていることが裏付けられた(文献24)。

(9)喫煙とメタボリックシンドローム
 健康診断受診者でメタボリックシンドロームのリスクは、喫煙者では喫煙本数が多いほど上昇し、禁煙者では禁煙後の年数が長くなるほど低下することが報告されている(文献25)(図表10)。




 また、日本人を対象とした前向きコホート調査(35〜59歳のメタボリックシンドロームがない男性2,994例を対象に、7年以上にわたり追跡)で喫煙はメタボリックシンドロームを発症しやすいことが報告されている(文献26)(図表11)。メタボリックシンドロームのリスクは非喫煙者を1.0としたとき、喫煙本数が多くなるほど上昇し、1日の喫煙本数が1〜20本では1.14倍、21〜30本では1.45倍、31本以上では1.59倍であった。


引用文献
23) Craig WY, Palomaki GE, Haddow JE. Cigarette smoking and serum lipid and lipoprotein concentrations: an analysis of published data. Br Med J. 1989; 298: 784-8
24) Maeda K, Noguchi Y, Fukui T. The effects of cessation from cigarette smoking on the lipid and lipoprotein profiles: a meta-analysis. Prev Med 2003; 37:283-290
25) Ishizaka, N. et al. : Atherosclerosis 181 : 381, 2005
26) Nakanishi N, Takatorige T, Suzuki K. Cigarette smoking and the risk of the metabolic syndrome in middle-aged Japanese male office workers Ind Health 2005; 43: 295-301

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