3.受動喫煙による健康影響
 受動喫煙はがんだけでなく、循環器、呼吸器、生殖器、その他に多くの重篤な疾病を引き起こす。受動喫煙に起因する年間死亡数は、世界では約60万人、日本人では約1万5千人(肺がん、虚血性心疾患および脳卒中による死亡)と推計されている(文献3)。米国公衆衛生総監報告書(2006)から喫煙との関連について十分または可能性を示唆するエビデンスがあるとされる病気を示す(文献44)(図表17)。
 受動喫煙への曝露と脳卒中との関連について、2006年の同報告書では、「因果関係を示唆しているがまだ十分なエビデンスはない」としていたが、2014年の同報告書では、その後の研究を受けて、「因果関係とする十分なエビデンスがある」とされた(文献2)。


 非喫煙者のタバコ煙への不随意曝露について得られている科学的証拠から、この報告書では、次のような主要な結論が理論的に裏付けられるとされている。
1. 受動喫煙は、子供や成人の非喫煙者において、早死や若年段階での疾患を生じさせる。
2. 受動喫煙に曝露されている子供では、乳幼児突然死症候群(SIDS)、急性呼吸器感染症、耳の疾患、ならびに喘息の悪化などのリスクが増大する。親による喫煙は、子供に呼吸器症状を生じさせ、肺の成長を遅らせる。
3. 受動喫煙への成人の曝露は、心血管系に直接的な有害影響を及ぼし、冠動脈心疾患や肺がんを引き起こすものである。
4. 科学的証拠によると、受動喫煙へのすべてのレベルの曝露にリスクが伴うことを示唆している。
5. タバコの規制に大きな進展が認められたにもかかわらず、現在でも家庭や職場において、子供と成人を含めた何百万人というアメリカ人が受動喫煙の曝露を受けている。
6. 屋内空間での喫煙を排除することにより、非喫煙者を受動喫煙の曝露から完全に保護することができる。喫煙者と非喫煙者の分離や大気の浄化、建物の換気などを実施しても、非喫煙者の受動喫煙の曝露を完全になくすことはできない。

(国立保健医療科学院研究情報センターたばこ政策情報室訳
たばこ煙への不随意曝露の健康影響)


 厚生労働省 喫煙の健康影響に関する検討会報告書(2016)(文献3)では日本人における受動喫煙による健康影響として十分または可能性を示唆するエビデンスがあるとされた病気を示した。


引用文献
44) U.S. Department of Health and Human Services. The Health Consequences of Involuntary Exposure to Tobacco Smoke: A Report of the Surgeon General. Atlanta, GA: U.S. Department of Health and Human Services, Centers for Disease Control and Prevention, Coordinating Center for Health Promotion, National Center for Chronic Disease Prevention and Health Promotion, Office on Smoking and Health, 2006.
2) National Center for Chronic Disease Prevention and Health Promotion (US) Office on Smoking and Health. The Health Consequences of Smoking-50 Years of Progress: A Report of the Surgeon General. Atlanta (GA): Centers for Disease Control and Prevention (US); 2014.
3)厚生労働省 喫煙の健康影響に関する検討会編. 喫煙と健康 喫煙の健康影響に関する検討会報告書. 2016.

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