4.未成年の禁煙治療にあたっての留意点
わが国では禁煙補助剤としてニコチンパッチ、ニコチンガム、バレニクリンが使用可能であるが、未成年者の使用に関しては、データが少ないので慎重投与ということになっている。特に、バレニクリンは、世界的にも試験ができていないので使用すべきではない。ニコチン代替療法については、米国では12歳以上には処方箋薬として、18歳以上ならOTCでも使用できることから、現時点では禁煙外来の経験を積んだ医師がカウンセリングを十分にしたうえで慎重投与すれば有用であると考えられている。
禁煙外来担当者として知っておきたい問題点は、中高生が禁煙外来を受診することは極めてまれということである。高校生約300万人の5%が常習喫煙者とすれば15万人の未成年喫煙者がいるわけで、禁煙外来が増えているとはいえ、実際に受診した例は1%にもならないと考えられる。
しかし平成28 年度から35 歳未満の者のブリンクマン指数200
以上の要件が廃止され、若年層の保険による禁煙治療が可能になった。スクリーニングテストでニコチン依存度と診断され、直ちに禁煙することを希望しかつ治療に同意していることを確認したうえで、家族等と相談の上適用することになる。
欧米で実施されている未成年者への禁煙支援は、学校ベースであったり保健センターベースであったり、地域ベースであったり、若者がアクセスしやすい無料プログラムが中心である。そういうものを率先して作ろうという努力と並行して、禁煙外来を実施する必要があり、今後の各地での活動に期待したい。さらには、未成年者の喫煙率を下げるものとして明らかに根拠があるタバコ税の値上げ、写真によるパッケージの警告表示、メディアによる禁煙推進、自動販売機の撤廃などについてのアドボカシー運動に力を注ぐべきことはいうまでもない。
なお、2016年11月に日本禁煙学会が作成した「若年者の禁煙治療指針」では、20歳未満の未成年者に対する禁煙治療について、国内外のエビデンスを紹介するとともに、心理的治療や社会的治療についてもわかりやすくまとめられている。
http://www.jstc.or.jp/uploads/uploads/files/gakkaisi_161226_145.pdf
参考文献
(1) 藤原久義、阿彦忠之、飯田真美ほか: 第4節 小児・青少年; in 禁煙ガイドラインSmoking Cessation Guideline (JCS 2005), Circulation Journal
2005,69, Suppl. IV, 1058-1065
(2) Backlinger CL, Fagan P, Matthews E, et al: Adolescent and young adult tobacco prevention and cessation:
current status and future direction. Tob Control 2003,12 iv46-53
参考教材
(1) 日本禁煙協会、ビデオ「あぶないタバコが命をねらっている」、2001年