1.未成年者の喫煙の実態と禁煙の必要性
(1)喫煙は未成年から始まる
 米国公衆衛生総監の1994年報告書(文献1)を受け、当時のFDA長官で小児科医のDavid A. Kessler博士が 用いた「Smoking is a pediatric disease(喫煙は小児の病気である)」という表現は、その後世界のタバココントロールに多大な影響を与えた。当時の米国人30代喫煙者の調査(文献2)によると、20歳までに喫煙を開始した者は91.3%、毎日喫煙する状態になった者は77.0%であった(図表1)。喫煙習慣は10代で始まるというのは確立された科学的真実なのである。




(2)わが国における未成年の喫煙率
 2014年の厚生労働科学研究班による調査(文献3)では、喫煙率は徐々に低下しているものの、高校3年生男子の13%、女子の6%が喫煙経験を持っていた(図表2)。我が国では、価格も安く、若者向きデザインが容認されるなど、未成年者はタバコ産業のターゲットになっている。




(3)未成年者も禁煙したいと思っている
 2004年の国立保健医療科学院の調査(文献4)では、月喫煙者のうち、朝起きてすぐに吸いたいと思う、あるいは吸っていると答えた者は、中学1年の男子で18%、女子で26%、高校3年になると男子で62%、女子で59%となった(図表3)。中高生のうちにニコチン依存症が成立していくことが読み取れる。月喫煙者のうち、禁煙に取り組んでいる者や止めたいと答えた者は中学3年以上では40%を越えており(図表4)、一刻も早い介入が望まれる。




引用文献
(1) 1994 Surgeon General's Report-Preventing Tobacco Use Among Young People
http://www.cdc.gov/tobacco/data_statistics/sgr/sgr_1994/index.htm
(2) Giovino GA, Henningfield JE, Tomar SI, et al: Epidemiology of tobacco use and dependence. Epidemiologic Rev 1995; 17:48-65
(3)大井田隆、尾崎米厚ら.未成年者の健康課題および生活習慣に関する実態調査研究. 厚生労働科学研究費補助金循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究事業(主任研究者 大井田隆)平成27年度報告書 2016;p.2
(4)尾崎米厚、神田秀幸:未成年者の喫煙 林謙治編;青少年の健康リスクー喫煙。飲酒および睡眠障害の全国調査からー.45-57, 自由企画・出版, 2008



1 2 3 4 5 次へ 1/10
次へ
1/10
ページトップへ戻る