3.禁煙治療の方法と実際
 平成28 年4 月からニコチン依存症管理料について、35 歳未満の者のブリンクマン指数(=1 日の喫煙本数×喫煙年数)200 以上の要件が廃止され、若年層のニコチン依存症患者にも保険による禁煙治療が可能になった。ニコチン依存症にかかるスクリーニングテストで依存度を判断し、本人の禁煙の遺志を確認するとともに、家族等と相談の上適用することになる。
 未成年者が禁煙外来を受診したときの方法について説明する。就労している未成年者が自分の意思で来院する場合や、18歳以上の大学生などは成人と同様の方法になるので、ここでは18歳未満の、多くは中高生の禁煙治療を中心に説明する。
 欧米で効果的と認められているカウンセリングは、いずれも継続的に順序だてて実施されたもので、主として認知行動療法の理論に基づいて実施されている。しかし、日本の禁煙外来は、単回しか来院しない者が70%と報告されており(文献10)、短時間で介入する場合、どのように時間配分すべきかは今後の検討課題である。しかし、まず基本(文献7)(文献11)は抑えておくべきであり、未成年者においても5つのAに従って実施する。

(1)ASK 
 思春期の中高生が、初対面の大人をすぐに信頼して本音を語ることはほとんどない。診療の場に慣れていないことがほとんどだし医療職に対する期待感も薄い。自我が不安定なだけに、過度に緊張したり、反抗的だったりもする。こういう状況でタバコの害を話し始めても心には届かない。まず、挨拶や一般的質問からはいり、信頼関係を築くことが大切である
 前述のように、未成年者の喫煙は極めて個人差が大きい。個々の状況を正確に把握することが成功のポイントである。知っておくべき事項については、図表8のようなものがあげられている(文献11)。一つずつ聴こうとすると時間がかかる上、尋問調になってしまうので、タバコを中心におきながら何気なく会話するように努める。




【会話例】
・学校はどう?タバコ吸いたくなると困るんじゃないの?
・学校を休まないで行っているの?すごいなあ。体調悪いこともあるんじゃないの?
・何人家族?お兄さんやお姉さんが吸っていると、吸いやすいといわれているけど・・・。
・タバコのことは、どんなふうに思っているの?煙の成分で知っているもの教えてくれる?


引用文献
(7) Fiore MC, Jaen CR, Baker TB, et al. Treating tobacco use and dependence: 2008 update. Clinical Practice Guideline. Rockville: US Department of Health and Human Services. Public Health Service. pp165-173, 2008.
(10)加治正行:小児への禁煙治療に関する検討. 日本小児科学会誌. 2008;112:837-841
(11) Milton MH,Maule CO,Yee SL,et al: Youth Tobacco Cessation; A Guide for Making Informed Decisions, US Department of Health and Human Services. Public Health Service.pp27-49,2004


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