2.禁煙治療にあたっての基本的な考え方
重要性については異論がない青少年への禁煙治療だが、科学的方法が確立されていないのが現状である。AHRQの禁煙治療に関するガイドライン(文献7)によれば、若者が禁煙したいと希望する率は82%と高いが、不成功に終わる率は大人より高く、年間4%が成功しているにすぎない。このガイドラインによれば、7つの介入研究において、短くアドバイスしリーフレットを渡すような通常ケアに比べて、禁煙プログラムに参加すると、禁煙成功率が1.8倍高まった。カウンセリングの効果があると考えられ推奨されている。しかし、高まったとはいえ、禁煙成功率は11.6%と低値であり、難治であることがわかる(図表7)。
未成年者と一口に言っても、年齢、発達ステージ、生育環境など非常に幅広く個体差が大きい。このため、本数が体内のニコチンや一酸化炭素に必ずしも相関しない(文献8)し、自分の身体や社会に対する理解力も様々である。そのうえ、思春期という時期は、自立と依存の谷間で、種々の相反する感情に翻弄されることも多く一筋縄で信頼関係を作れるとは限らない。
したがって、カウンセリング、それもまず現状把握のための傾聴の時間が重要である。ニコチン代替療法については、安全性については確立されてきている(文献9)ので、動機が高まっていて理解力も十分な症例において、慎重に投与する。加治らの外来においてニコチンパッチを処方した28人中6人(23%)の1年後禁煙という良好な数字が報告されている(文献10)。
引用文献
(7) Fiore MC, Jaen CR, Baker TB, et al. Treating tobacco use and dependence: 2008 update. Clinical Practice Guideline. Rockville: US Department of Health and Human Services. Public Health Service. pp165-173, 2008.
(8) Hurt RD, Croghan GA, Beede, SD, et al: Nicotine Patch Therapy in 101 Adolescent Smokers -Efficacy, Withdrawal Symptom Relief, and Carbon Monoxide and Plasma Cotinine Levels- . Arch Pediatr Adolesc Med. 2000; 154:31-37
(9) Moolchan ET, Robinson ML, Ernst M, et al: Safety and Efficacy of the Nicotine Patch and Gum for the Treatment of Adolescent Tobacco Addiction. Pediastrics 2005: 115, e407-e414
(10)加治正行:小児への禁煙治療に関する検討. 日本小児科学会誌. 2008;112:837-841