【コラム】精神疾患患者に関する禁煙ガイドライン
以下の4つのガイドラインは精神疾患患者の禁煙治療において大変参考になる。
1.オーストラリアの一般開業医向け「統合失調症患者における喫煙管理ガイドライン」
(以後オーストラリアガイドライン)
図表14の精神疾患患者における禁煙治療の実際はこれをもとに他の精神疾患患者にも応用できると考え改変したものである。ここには「信頼関係」「こまめな診察」「薬物治療」「長期のフォロー」「精神科医との連携」のポイントがはいっている。これを踏まえて禁煙治療をすると効果が高い。
このガイドラインでは、禁煙開始後3日以内の初回受診、最初の1ヵ月は毎週、2ヵ月目から6ヵ月までは毎月の受診が推奨されている。日本においては保険での禁煙治療の枠は5回であるが、精神疾患という基礎疾患がある場合は5回の診療以外にケースの困難性にあわせて頻度と時間をかけることを勧める。
薬剤血中濃度のモニターは毎回採血して血中濃度を測定するのは困難で、実際には服用薬剤の効果や副作用をよく知っておき、その変化をモニターするのが実際的であろう。
2.APAによるガイドライン
APAは1996年に「ニコチン依存症患者の治療のための実践ガイドライン」を出しており、2006年には「物質使用障害患者の治療、第2版」(以後APAガイドライン)の中にニコチン依存症を含めて更新している(図表20)。統合失調症などのガイドライン同様、禁煙治療においてもホームページで最新のものをみることができる。
3.「喫煙およびタバコ依存症治療に関する米国の標準ガイドライン」2008 年版(以後USガイドライン)
精神疾患を合併している場合の治療について触れている。
特定の集団とその他のトピック - タバコの使用と依存の治療:2008年更新 - NCBIブックシェルフ (nih.gov)
4.EPA ガイドライン 欧州精神医学会においても、タバコ依存症は精神疾患のある成人において最も一般的な物質使用障害であり、その有病率は一般人口の2?4倍高い。タバコは精神疾患患者の寿命を縮め生活の質を低下させ、予防できる死の主要原因であることから、精神疾患患者の禁煙の手引を作成した。(1)記録、(2)介入のタイミング、(3)カウンセリング、(4)治療の提案、(5)禁煙後の接触頻度、(6)フォローアップ訪問、(7)再発防止の7つを推奨している。
文献資料
1 Strasser, K., et al: Smoking cessation in schizophrenia. General practice guidelines. Aust Fam Physician,
2002; 31(1): 21-4.
2 Treatment of Patients With Substance Use Disorders, Second Edition
https://psychiatryonline.org/pb/assets/raw/sitewide/practice_guidelines/guidelines/substanceuse.pdf
3 U.S. Department of Health and Human Services, Public Health Service: Treating Tobacco Use and Dependence.
Clinical Practice Guideline.2008
http://www.surgeongeneral.gov/tobacco/treating_tobacco_use08.pdf 2008.8.1.
4 EPA Guidance on Tobacco Dependence and Strategies for Smoking Cessation in People with Mental Illness
https://www.cambridge.org/core/journals/european-psychiatry/article/abs/epa-guidance-on-tobacco-dependence-and-strategies-for-smoking-cessation-in-people-with-mental-illness/439F840283842AC04758BFC2B510F148