2.禁煙治療にあたっての基本的な考え方
 長い間精神科において喫煙問題は“無視されてきた問題”であった。精神科病院というとタバコのヤニで黄色くなった壁、喫煙する患者が常にいてタバコ臭い室内、というイメージであったかもしれない。そして“精神疾患患者にはタバコが必要”、“タバコを吸わせないと精神症状が悪化する”、“精神疾患患者からタバコをとりあげたらかわいそう”、と考える精神科医療従事者も少なくなかった。一方、タバコの悪影響が明らかになった現在、精神疾患患者だからといってタバコについての情報をあたえず受動喫煙対策を行わないのは、精神疾患患者を特別視してバリアーを作ることになるだけでなく、倫理違反ともいえる。
 精神疾患患者は身体脆弱性がある上に、薬剤副作用が加わったり、生活習慣のコントロールがうまくできなかったりで、身体合併症を起こしやすい(図表12)。そこに喫煙するとさらに合併症を起こしやすくなる。しかし、その精神症状ゆえに十分な治療を受けられなかったり、経済的・心理的・社会的負担が大きく家族の支援を得られなかったりする。従って精神疾患患者こそ喫煙しないことのメリットは大きいといえる。



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