4.対象患者
 保険による禁煙治療は、下記の全ての条件に患者が該当し、医師がニコチン依存症の管理が必要であると認めた者を対象に行う。

ア 「禁煙治療のための標準手順書」に記載されているニコチン依存症に係るスクリーニングテスト
 (TDS)で、ニコチン依存症と診断されたものであること。
イ 35歳以上の者については、1日の喫煙本数に喫煙年数を乗じて得た数が200以上であるもので
  あること。
ウ 直ちに禁煙することを希望している患者であって、「禁煙治療のための標準手順書」に則った
  禁煙治療について説明を受け、当該治療を受けることを文書により同意しているものであること。
(厚生労働省保険局医療課長通知 保医発0304第1号、令和4年3月4日)


(1)ニコチン依存症に係るスクリーニングテスト(TDS)(文献2)
 保険適用の対象患者を抽出するために実施するニコチン依存症のスクリーニングテスト(TDS)は、WHOの「国際疾病分類第10版」(ICD-10)やアメリカ精神医学会の「精神疾患の分類と診断の手引き」の改訂第3版および第4版(DSM-V-R、DSM-W)に準拠して、精神医学的な見地からニコチン依存症を診断することを目的として開発されたものである。このテストは1998年度の厚生省の「喫煙と健康問題に関する実態調査」でも用いられている。
 このテストは、10項目の質問で構成されている(図表3)。「はい」を1点、「いいえ」を0点とし、合計得点を計算する。質問に該当しない場合は、0点と計算する。TDSスコア(0〜10点)が5点以上をニコチン依存症と診断する。



(2)ブリンクマン指数
 過去から現在までの喫煙の総量(曝露量)を割り出す目安として、1日当たりの平均喫煙量(本数)と喫煙年数を掛け合わせた喫煙指数(ブリンクマン指数)が用いられる。
 加熱式たばこの場合の喫煙本数は、種々の形状があることから以下のように算定する(文献3)。
・たばこ葉を含むスティックを直接加熱するタイプ…スティック1本を紙巻たばこ1本として換算
・たばこ葉の入ったカプセルやポッドに気体を通過させるタイプ…1箱を紙巻たばこ20本として換算
〈例〉21歳から30歳まで紙巻たばこ喫煙1日15本、31歳から35歳まで紙巻たばこ喫煙1日5本に加え加熱式たばこカプセルタイプ(1箱5カプセル入り)1日2カプセルの場合、ブリンクマン指数の算定は(15本×10年)+(5本×5年)+(20本×2/5箱×5年)=215 となる。


引用文献
2)Kawakami N, Takatsuka N, Inaba S, et al. Development of a screening questionnaire for tobacco/nicotine dependence according to ICD-10, DSM-V-R and DSM-W. Addictive Behaviors 1999; 24: 155-166.
3)日本循環器学会, 日本肺癌学会, 日本癌学会、日本呼吸器学会: 禁煙治療のための標準手順書 第8.1版: 2021.


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