1.はじめに

 2006年3月までわが国では、禁煙治療が自費で行われてきた。しかしニコチン依存症について、疾病であるとの位置付けが確立されたことを踏まえて、ニコチン依存症と診断された患者のうち禁煙の希望がある者に対する一定期間の禁煙治療について、新たに診療報酬上の評価を行うことができるようになり、2006年4月より「ニコチン依存症管理料」が制定された。このニコチン依存症管理料は原則として外来患者を対象としたものであるが、2008年4月の薬価収載に伴う留意事項通知により、ニコチン依存症管理料を算定する禁煙治療を行っている患者が、治療途中で入院し、引き続き禁煙治療を実施した場合、その治療に要した薬剤料を入院中でも算定できることになった。2016年の診療報酬改定ではブリンクマン指数に関する要件が35歳未満において撤廃され、未成年を含め若年者への禁煙治療が健康保険で認められるようになった。2020年の診療報酬改定では加熱式たばこの使用に対しても健康保険による禁煙治療の対象として正式に認められた。また、禁煙治療の一部期間に情報通信機器を用いたオンライン診療が認められた。2020年12月には、ニコチン依存症治療用アプリ及びCOチェッカーが、医療機器として保険適用になった。さらに、2022年の診療報酬改定により、かかりつけ患者に対しては初診からすべてオンライン診療で実施できるようになった。
 健康保険により禁煙治療を実施すれば、禁煙を希望する喫煙者は少ない自己負担額で禁煙治療に踏み切ることができる。オンライン診療を活用すれば、患者の禁煙治療への利便性が高まる。ニコチン依存症管理料を適用するには、患者、医療機関ともにいくつかの要件を満たすことが必要である。本項ではニコチン依存症管理料について学習する。


1 2 3 4 5 次へ 1/10
次へ
1/10
ページトップへ戻る