2.禁煙による余命の延長、死亡リスクの低減
British Physicians Studyからのデータが禁煙することによる余命延長効果の推計に使用される。Dollらによる英国の男性医師34,439例を対象におこなった喫煙習慣および禁煙年齢と死亡に関する50年間にわたるコホート調査(文献1)において、喫煙により余命が10年間短くなることが示されたことはよく知られている。この研究ではベースライン調査後5回喫煙状況の変化について調査がなされ、禁煙による健康改善効果が調査された。そして、30歳、40歳、50歳、60歳で禁煙することにより、各10年、9年、6年、3年余命が延長することも示されている(図表1)。禁煙によるメリットは若年で禁煙するほど高まり、40(35〜44)歳で禁煙すると生存率曲線は非喫煙者とほぼ同様となっていた。禁煙が早ければ早いほど余命の延長など長期的効果は大きいが、高齢であっても、短期効果は当然期待できる。
さらに2008年には、20年を超える追跡調査で女性における喫煙および禁煙と、全死亡および原因別死亡率の関係が発表された。米国のNurses’ Health Study(追跡期間:1980〜2004年)に参加した女性看護師104,519人を対象にした前向きコホート調査(文献2)で、非喫煙者と比較した喫煙者では全死亡のリスク上昇(HR 2.81; 95%信頼区間2.68〜2.95)および主要な原因別死亡すべてにおいて死亡リスク上昇が認められた。この研究ではベースライン調査後2年毎に喫煙状況の変化が調査された。喫煙で増加した原因別全死亡リスクは禁煙20年後に非喫煙者のレベルまで低下していたが、リスクの低下速度は死亡原因ごとに異なっていた(図表2)。ハザード比が特に高かった全呼吸器疾患(10.00)、COPD(39.63)、肺がん(21.09)の禁煙の効果が示されている。全呼吸器疾患では5〜10年の禁煙により死亡リスクが18%低下し、20年禁煙すると非喫煙者レベルとなり、COPDでも同様であった。肺がんは禁煙5年以内に死亡リスクが21%、20〜30年で87%減少していた。また、喫煙による心臓血管死リスクの大部分は禁煙後すみやかに消失する可能性が示されている。
また、禁煙の総死亡に及ぼす長期効果について、ランダム化比較臨床試験である米国およびカナダの10の臨床センターで行われたLung Health Studyの結果が報告されている(文献3)。自覚症状をみとめない閉塞性呼吸障害のある喫煙者を、禁煙の特別支援プログラムを受ける群と、通常支援群に分け、14.5年の追跡調査をおこなったところ、禁煙特別支援群の全死亡率は、通常群に比べて有意に低くなっており(8.83/1,000人年, vs. 10.38/1,000人年)、通常群の全死亡の特別支援プログラム群に対するハザード比は1.18(1.02-1.37)であり、禁煙のための特別支援プログラムは全死亡を減らすために実効性があることが判明した。
引用文献
1)Doll R, Peto R, Boreham J. Mortality in relation to smoking: 50 years' observations on male British doctors. BMJ 2004; 328(7455): 1519-1528
2)Kenfield SA, Stmpfer MJ, Rosner BA, et al. Smoking and smoking cessation in relation to mortality in women. JAMA 2008; 299: 2037-2047
3)Anthonisen NR, Skeans MA, Wise RA, et al. The effects of smoking cessation intervention on 14.5-year mortality: a randomized clinical trial. Ann Intern Med. 2005; 142: 233-239
British Physicians Studyからのデータが禁煙することによる余命延長効果の推計に使用される。Dollらによる英国の男性医師34,439例を対象におこなった喫煙習慣および禁煙年齢と死亡に関する50年間にわたるコホート調査(文献1)において、喫煙により余命が10年間短くなることが示されたことはよく知られている。この研究ではベースライン調査後5回喫煙状況の変化について調査がなされ、禁煙による健康改善効果が調査された。そして、30歳、40歳、50歳、60歳で禁煙することにより、各10年、9年、6年、3年余命が延長することも示されている(図表1)。禁煙によるメリットは若年で禁煙するほど高まり、40(35〜44)歳で禁煙すると生存率曲線は非喫煙者とほぼ同様となっていた。禁煙が早ければ早いほど余命の延長など長期的効果は大きいが、高齢であっても、短期効果は当然期待できる。
さらに2008年には、20年を超える追跡調査で女性における喫煙および禁煙と、全死亡および原因別死亡率の関係が発表された。米国のNurses’ Health Study(追跡期間:1980〜2004年)に参加した女性看護師104,519人を対象にした前向きコホート調査(文献2)で、非喫煙者と比較した喫煙者では全死亡のリスク上昇(HR 2.81; 95%信頼区間2.68〜2.95)および主要な原因別死亡すべてにおいて死亡リスク上昇が認められた。この研究ではベースライン調査後2年毎に喫煙状況の変化が調査された。喫煙で増加した原因別全死亡リスクは禁煙20年後に非喫煙者のレベルまで低下していたが、リスクの低下速度は死亡原因ごとに異なっていた(図表2)。ハザード比が特に高かった全呼吸器疾患(10.00)、COPD(39.63)、肺がん(21.09)の禁煙の効果が示されている。全呼吸器疾患では5〜10年の禁煙により死亡リスクが18%低下し、20年禁煙すると非喫煙者レベルとなり、COPDでも同様であった。肺がんは禁煙5年以内に死亡リスクが21%、20〜30年で87%減少していた。また、喫煙による心臓血管死リスクの大部分は禁煙後すみやかに消失する可能性が示されている。
また、禁煙の総死亡に及ぼす長期効果について、ランダム化比較臨床試験である米国およびカナダの10の臨床センターで行われたLung Health Studyの結果が報告されている(文献3)。自覚症状をみとめない閉塞性呼吸障害のある喫煙者を、禁煙の特別支援プログラムを受ける群と、通常支援群に分け、14.5年の追跡調査をおこなったところ、禁煙特別支援群の全死亡率は、通常群に比べて有意に低くなっており(8.83/1,000人年, vs. 10.38/1,000人年)、通常群の全死亡の特別支援プログラム群に対するハザード比は1.18(1.02-1.37)であり、禁煙のための特別支援プログラムは全死亡を減らすために実効性があることが判明した。
引用文献
1)Doll R, Peto R, Boreham J. Mortality in relation to smoking: 50 years' observations on male British doctors. BMJ 2004; 328(7455): 1519-1528
2)Kenfield SA, Stmpfer MJ, Rosner BA, et al. Smoking and smoking cessation in relation to mortality in women. JAMA 2008; 299: 2037-2047
3)Anthonisen NR, Skeans MA, Wise RA, et al. The effects of smoking cessation intervention on 14.5-year mortality: a randomized clinical trial. Ann Intern Med. 2005; 142: 233-239