短時間支援のABR方式の中のR(Refer)にあたる「禁煙治療のための医療機関等の紹介」の具体的方法について解説します。
 問診票で1ヵ月以内に禁煙したいと答えた喫煙者や、短時間の禁煙アドバイスの結果、禁煙の動機が高まった喫煙者に対しては、禁煙治療の利用を勧め、禁煙治療が保険で受けられる医療機関を紹介します。禁煙治療を勧める理由は、他の方法に比べて禁煙につながる可能性が高いからです。
 2016年4月から健康保険による禁煙治療の条件が変わり、若年者のニコチン依存症患者にも健康保険が適用されることになりました。具体的な保険適用の条件は、1)35歳以上の者については、1日喫煙本数×喫煙年数が200以上であること、2)いますぐに禁煙したいと考えており、禁煙治療を受けることを文書により同意していること、3)ニコチン依存症のスクリーニングテスト(TDS)でニコチン依存症と診断された者であること、です。
 保険による禁煙治療の条件を満たさない場合や医療機関を受診する時間が取れない場合、禁煙後の離脱症状を軽くするために、薬局・薬店でOTC薬のニコチンパッチやニコチンガムを購入して禁煙する方法を紹介しましょう。また、保険による条件を満たさない場合でも、自由診療で禁煙治療を受けることができることを伝えておきましょう。特に喫煙本数が多く、OTC薬では離脱症状が十分抑えられないヘビースモーカーや、医学的管理の必要性が高い精神疾患等の合併症を有する喫煙患者に対しては、禁煙治療の利用を勧めましょう。

 禁煙の動機が高まっている喫煙者に対して、ABR方式で禁煙外来を紹介しても、禁煙外来の受診に結びつかないことが少なくありません。そこで、ABR方式をさらに進めた方法の実施、つまり禁煙希望者を禁煙外来につなぐことまでを行う取り組みが望まれます。そのための具体的な方法は、その場で禁煙外来の予約を取ることです。このことにより、禁煙実行への橋渡しが可能となります。その場で予約が取ることが難しい場合は、後日喫煙者に連絡をとって予約を取ります。

 禁煙外来予約の手続きをスムーズに行い、対象者が禁煙外来に受診しやすいようにするためには、健診実施機関が禁煙外来を開設し、できればオンライン診療で禁煙治療を提供できるようにすることです。これにより、健診時の短時間禁煙支援と禁煙希望者への禁煙治療をワンストップサービスとして提供できることになります。なお、喫煙者が加入する保険者が禁煙治療を提供している場合は、その利用を勧める方法もあります。

 海外では、喫煙者に医療の場で禁煙を勧め、本人の了解を得た上で喫煙者の連絡先を無料の禁煙電話相談(クイットライン)に連絡し、クイットラインから連絡を取って禁煙サービスを提供する取り組みが実施されています。このことにより、禁煙治療の受療率が約12倍増加したという報告があります。


 禁煙治療が保険で受けられる医療機関は、日本禁煙学会のホームページから検索することができます。加えて、オンライン診療を実施している施設も検索できるようになりました。あらかじめ喫煙者に渡す近隣の医療機関のリストを準備しておきましょう。
●保険で禁煙治療が受けられる医療機関の検索サイト
日本禁煙学会  http://www.nosmoke55.jp/nicotine/clinic.html

 ただし、保険による禁煙治療は、受診条件があります。受診の条件は、前述した問診票(図表3)のQ4〜Q7の項目の回答でチェックできます。健診の場など時間が限られている場合は、喫煙者が後で確認できるようにQ4〜Q7の質問を自己チェック用のリーフレットとして作成し、渡せるように準備しておきましょう。




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