(2)ニコチン製剤
 ニコチン離脱症状は、ニコチンの作用しない状態でのドパミン作動性ニューロンからのドパミン放出能力が衰えることで発生する。
 ニコチン代替療法は、ニコチン離脱症状に対してニコチンを補給し離脱症状を緩和しながら禁煙に導く方法である。離脱症状は、一般的には禁煙して2〜3日後が最も強く、1週間ほどで軽減してくる。禁煙開始とともにニコチン製剤の使用を開始し、用量を漸減して体内に移行するニコチン量を減量し、2〜3ヵ月で終了する方法が一般的である。ニコチン製剤は完全禁煙してから使用するのが原則である。喫煙しながらニコチン製剤を使用するのは、血中ニコチン濃度が高くなりすぎて危険とされている。
 喫煙では、ニコチンは静脈内投与よりも早く7〜8秒で脳に達する。喫煙およびニコチン製剤のニコチン血行濃度を比較すると、喫煙ではピークへの到達が10数分で、ピーク時の血中濃度もニコチン製剤に比べて高くなる(図表3,4)。ニコチン製剤では使用後血中ニコチン濃度が高まるまで時間を要し、ニコチンガムで30〜40分、ニコチンパッチでは7〜15時間要する。






 喫煙ではニコチンの高濃度の反復暴露により身体的依存を形成するが、ニコチンパッチによる持続的低濃度のニコチン投与では依存が形成されにくい。ニコチンを使用することに不安感をいだく患者もいるので、この違いをあらかじめ説明しておくことが望ましい。しかし、ニコチンガムではまれに依存を起こすことがある。また、ニコチンパッチで治療中に急な喫煙欲求があった場合に、ニコチンガムを併用して喫煙欲求を軽減させることはよく試みられている。一方、鼻腔スプレーは喫煙に近い血行動態を示すので、今後発売されれば、突然起きるタバコへの切望感に対する効果が期待される。


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