2.薬剤の特徴

(1)バレニクリン
 バレニクリン酒石酸塩(商品名チャンピックス®、以下「バレニクリン」)は、米国で2006年5月に、国内では2008年1月に承認、5月に発売された我が国初の経口禁煙補助剤である。脳内報酬回路にあるα4β2ニコチン受容体にニコチンが結合するとドパミンが過剰に放出される(図表2)。一方、ニコチンが存在しない状態ではドパミン放出が低下し、いわゆるニコチン離脱症状(俗に言う「禁断症状」)が起こる。この時喫煙によりニコチンを摂取すると、低下していたドパミン放出が回復するため離脱症状が消失する。脳はこれを報酬と感じるため、離脱症状発現時にはニコチンへの渇望が起こる。
 ニコチン製剤の作用が喫煙に代わってニコチンを補充することにより、禁煙に伴う離脱症状を緩和してニコチン依存から脱却する方法であるのに対して、バレニクリンはニコチンを含まず、ニコチン依存症の形成に寄与している脳内のα4β2 ニコチン受容体に高い親和性を有し、ニコチンの結合を阻害して喫煙による満足感を得にくくする。このため服用時に喫煙してもニコチンの作用が発現せず、期待した報酬が得られないので、ニコチンへの渇望が徐々に弱まっていく。また、バレニクリンがα4β2ニコチン受容体に結合し部分作動薬として少量のドパミンを放出することにより、禁煙に伴う離脱症状やタバコに対する切望感を軽減する。これはニコチン製剤の作用と類似している。






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