すべての患者にタバコを吸っているか聞き、吸っている場合には状況に応じて禁煙を勧める。これまで禁煙について話をされことがないという精神疾患患者は多く、タバコについての正しい情報を知ると、禁煙に関心を示す者は少なくない。
 現在では、患者・職員の受動喫煙を防ぎ、禁煙環境を整えるという意味合いから、単科精神科病院でも敷地内禁煙にするところが増加している(図表13)。そこではきれいな空気の中で患者は治療を受け、職員は働いている。患者・職員とも喫煙率が低下し、入院患者の喫煙率がゼロになった病院もある。精神疾患患者は禁煙環境があれば禁煙できるのである。むしろ精神疾患患者の禁煙を妨げているのは”精神疾患患者に禁煙は無理、タバコをとりあげるのは酷”といった医療従事者の意識であろう。
 喫煙はWHOの国際傷害疾病分類第10版(ICD-10)において「精神作用物質による精神及び行動の障害」に分類され、米国精神医学会 American Psychiatric Association(以後APA)による「精神疾患の診断・統計マニュアル第5版」(DSM-X)においては物質関連障害の項においてアルコール、大麻、幻覚薬、などと共に薬物障害の一つとして取り上げられ、“病気”と認識されている。喫煙している精神疾患患者は基礎精神疾患の他にニコチン依存症という更なる精神疾患を合併していることになる。喫煙はニコチン依存症という治療すべき疾患であるという認識で精神疾患患者にも対応することが望まれる。




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