背景と沿革
2006年4月に禁煙治療が保険適用となりました。2023年10月現在、日本では、17,000を超える施設から健康保険による禁煙治療を実施できる登録がされていますが、全医科医療施設数に占める割合は約15.0%にとどまります。また、実際に登録施設となっていても、施設によるスタッフの体制や治療成績に差があるのが現状です。一方、日々の診療や日常業務をこなしながら、禁煙に関する情報収集を個人で行うことは大変な負担です。
このような現状を踏まえ、登録医療機関や禁煙支援ができるスタッフを増やすともに、禁煙支援・治療の質を向上させることを目的に、2010年に日本禁煙推進医師歯科医師連盟が、eラーニングを活用した禁煙支援・治療の指導者トレーニング(J-STOP)を開発しました。2015年からは公益社団法人地域医療振興協会との協働事業として実施しています。
2021年までの12年間に、自治体、学会、医師会などの医療団体、保険者、職域、保健医療従事者養成課程等を通して約9,000人が受講しました。2014年には、厚生労働省「第3回健康寿命をのばそう!アワード」では、健康局長優良賞を受賞しました。
eラーニングシステムでは、運用費の制約のため開講期間が年間3ヵ月程度にとどまるという利便性の問題がありました。そこで、運用費がより安価なWEB教材に改変して、2022年8月に通年で学習できるJ-STOPネクストを公開しました。
WEB教材への改変に合わせて、喫煙と感染症、加熱式たばこ使用者の禁煙支援、オンライン診療や禁煙治療アプリといった新たなトピックを加えるとともに、学習内容も全面改訂しました。
2023年8月の時点でJ-STOPネクストの受講者は約1300人、2010年以降の受講者累計は1万人を超えました。J-STOPネクストがさらに広く活用され、医療や健診等の場で出会う喫煙者に禁煙を勧める活動が普及するとともに、禁煙希望者が身近に禁煙治療を受けることができる環境が整備されることを願っています。
日本禁煙推進医師歯科医師連盟 J-STOP開発・普及ワーキンググループ
J-STOPの開発・普及ワーキンググループの現在のメンバーは以下のとおりです。
- 大島 明 大阪国際がんセンターがん対策センター
- 飯田 真美 岐阜県総合医療センター内科
- 加藤 正隆 医療法人かとうクリニック
- 川合 厚子 社会医療法人公徳会トータルヘルスクリニック
- 田中 英夫 大阪府寝屋川市保健所
- 谷口 千枝 愛知医科大学・看護学部
- 中村 正和 地域医療振興協会ヘルスプロモーション研究センター
- 野村 英樹 金沢大学附属病院総合診療科
- 増居 志津子 地域医療振興協会西日本事務局
- 順不同(2023年11月時点)
- 2014年3月に亡くなられた繁田正子先生(京都府立医大医学研究科地域保健医療疫学)にはワーキンググループメンバーとして多大の貢献をしていただきました。追悼と感謝の意を表します。