短時間支援のABR方式の中のB(Brief advice)にあたる「短時間の禁煙アドバイス」の具体的方法について解説します。
 ここでは、喫煙のステージや健診結果にかかわらず、全喫煙者を対象に短時間アドバイスを行います。短時間アドバイスでは、1)病歴や検査値、自覚症状、本人の関心事などを切り口に禁煙が重要であること(禁煙の重要性を高めるアドバイス)、2)禁煙には効果的な禁煙方法があること(禁煙のための解決策の提案)を伝えます。
 禁煙に対して気持ちが高まっている喫煙者に対しては、禁煙の重要性を高めるアプローチよりも禁煙のための解決策の提案にウエイトを置くことが一般に有用です。一方、まだ禁煙しようと考えていない喫煙者に対しては、喫煙者に合った個別的な情報提供で禁煙の重要性を高めることが大切です。しかし、禁煙しようと考えていない喫煙者においても、禁煙のための解決策の提案を行うことで、禁煙に対する動機が高まることも少なくないので、忘れずに情報提供しておきましょう。

(1)禁煙の重要性を高めるアドバイス
 問診票で喫煙状況を把握した喫煙者に対して、診察や問診、保健指導の場を活用して禁煙の重要性を伝えます。複数の保健医療関係者が連携をとりながら声をかけることが効果的です。
まず、「禁煙する必要があること」をはっきりと伝え、さらに、「禁煙が優先順位の高い健康課題であること」を伝えます。喫煙者に病歴や検査値の異常、自覚症状がある場合は、それらと喫煙との関係を結びつけて、喫煙の影響や禁煙の効果について説明します。喫煙関連疾患としては、糖尿病、脳血管障害(脳梗塞、くも膜下出血)、虚血性心疾患(異型狭心症を含む)、消化性潰瘍、COPDなどがあります。喫煙に関連した検査値の異常としては、脂質異常(HDLの低下、LDLやトリグリセライドの上昇)、糖代謝異常(血糖の上昇、インスリン感受性の低下)、血球異常(多血症、白血球増多)などがあります。
病歴や検査値に問題がない喫煙者に対しては、異常がないことをほめた上で、喫煙が取り組むべき重要な健康課題であることを伝えて禁煙を促しましょう。また、喫煙者本人の関心事や家族状況、生活背景などが把握できている場合は、それらを切り口として禁煙の重要性を高めるアドバイスをすると効果がさらに高まります。
ここでの働きかけは、喫煙者全員に対して行いますが、特に禁煙に対して気持ちが高まっていない喫煙者に対しては、禁煙の重要性を高めることが大切です。個別化したメッセージで喫煙者の気持ちが禁煙に対して高まるようアドバイスしましょう。

(2)禁煙のための解決策の提案
 次に、禁煙治療を受ければ「比較的楽に」「より確実に」「あまりお金もかけずに」に禁煙できることを伝えます。喫煙者の多くは、「禁煙は自分の力で解決しなければならない」「禁煙はつらく苦しいもの」と思い込んでいる傾向があります。禁煙は、治療を受けて薬を使うことで、苦しまずに楽にやめることができることを伝えます。これまでに何度も禁煙に失敗するなど、禁煙に自信がない喫煙者には、禁煙のための効果的な解決策に対する情報提供は、禁煙に対する自信を高めます。
禁煙に関心のない人には、いきなり禁煙の効果的な解決策について説明しても相手の抵抗や反発を招きます。そこで、現在禁煙する気持ちがないことを受けとめ、「今後の禁煙のために覚えておかれるといいですよ」と前置きした上で情報提供するとよいでしょう。前置きをすることで相手は抵抗感なく耳を傾けてくれます。




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