V.禁煙支援の実際−標準的支援(ABC方式)
 標準的支援のABC方式のA(Ask:喫煙状況の把握)とB(Brief advice:短時間の禁煙アドバイス)については、前述した短時間支援のABR方式と同様です。ここでは、C(Cessation support)にあたる「禁煙実行・継続の支援」の具体的方法について解説します。


 禁煙実行・継続のための支援(Cessation support)の内容は、初回の個別面接と電話によるフォローアップです。対象となる喫煙者は、問診票で直ちに(1ヵ月以内に)禁煙したいと答えた喫煙者や、短時間のアドバイスの結果、禁煙の動機が高まった喫煙者です。目安として10分程度の時間をかけて面接を行い、禁煙に踏み出せるよう支援します。面接の結果、禁煙開始日を設定した喫煙者には、禁煙の実行の確認と継続の支援を行うために、電話によるフォローアップを行いましょう。

(1)初回の個別面接の支援内容
 初回の個別面接では、@禁煙開始日の設定、A禁煙実行のための問題解決カウンセリング、B禁煙治療のための医療機関等の紹介を行います。

@  禁煙開始日の設定
 禁煙を開始する日は、喫煙者と話し合って具体的に決めます。禁煙開始日が決まったら、それまでに禁煙治療を利用するように伝えましょう。時間があれば禁煙宣言書を喫煙者と支援者の間で取り交わしておくと、本人の禁煙の決意を固めたり、支援者としてフォローアップを行う上で有用です。初回面接で禁煙開始日を設定した人には、6ヵ月間にわたり計4回のフォローアップを行います。フォローアップは、原則電話で行います。フォローアップの電話が通じやすい連絡先(携帯があれば携帯電話の番号)を確認し、電話に出やすい時間帯を把握しておきましょう。

A  禁煙実行のための問題解決カウンセリング
 禁煙実行にむけての問題解決カウンセリングの内容は、禁煙にあたって喫煙者が不安に思っていることや心配していることを聞き出し、その解決策を喫煙者と一緒に考えることです。仕事をしている喫煙者では「禁煙するとイライラして仕事が手につかなくなるのでは」とか、「禁煙しても仕事の付き合いでお酒を飲む機会が多いのですぐに吸ってしまうのではないか」といった心配をする場合があります。その場合、本人が心配していることを受けとめ、イライラなどの禁煙後の離脱症状は概ね2〜4週間で治まること、禁煙補助剤を使えば離脱症状がかなり軽減できることを伝えます。また、禁煙してしばらくの間は、お酒を飲みに行くことを控えたり、外でお酒を飲む場合は、できるだけタバコを吸わない人の隣の席に座る、周囲に禁煙宣言をするなど具体的な対処法を本人と話し合って決めておきましょう。
 問題解決カウンセリングに加えて、指導者として手段的な支援だけでなく情緒的な支援(ソーシャル・サポート)を行うことも重要です。具体的には喫煙者のことを気にかけていることを態度や言葉で表現しながら、喫煙者を励ましたり、禁煙できたことをほめることです。また、喫煙者が禁煙の経過について本音を話せるような雰囲気や関係を構築しておくことも大切です。
 問題解決カウンセリングと指導者としてのソーシャル・サポートは、禁煙率を高める効果が確認されているカウンセリング技法であり、2008年のアメリカの禁煙治療ガイドラインにおいて推奨されています。これらの技法は短時間の簡易な禁煙治療だけでなく、時間をかけて行う集中的な禁煙治療においても有用です。

B  禁煙治療のための医療機関等の紹介
 禁煙に関心がある喫煙者や、短時間の禁煙アドバイスの結果、禁煙の動機が高まった喫煙者に対しては、禁煙治療の利用を勧め、禁煙治療が健康保険で受けられる医療機関を紹介します。詳細は、前述の「禁煙治療のための医療機関等の紹介(Refer)」の項目を参照してください。特に「喫煙・受動喫煙に関する質問票」のQ4とQ6の回答結果から、ニコチン依存度が高いと判定された喫煙者には、禁煙治療を勧めましょう。




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